| TUNEUP |
| 排気ガスの渦巻く中、古河圭吾はいつもよりも大車輪で立ち働いていた。 昼休み……といっても圭吾のは午後4時からだが……まであと15分である。 「ケイ、予約札!赤青赤赤青赤青青赤青赤ぁ!赤赤の後の方手洗い!!」 「はいっ!」 洗車の車に貼るマグネットシートを引っつかんで走る。予約待ちでずらりと並べられた車に、それらを言われた順番で貼るのである。 赤はワックス、青は水洗い。予約で11台。夕方でもこの混みようは凄まじい。 「青の3番目、空気圧!」 「空気圧了解!」 圭吾の働くガススタンドは、新興住宅街と高速道路が近い。今日のような行楽シーズン前には、朝1時間早く店を開け、1時間遅く店を閉める。 それでも洗車は長蛇の列を作り、客は皆車を置いて、近くのファミレスと本屋、百円ショップで時間を潰してくるのだ。 空気圧チェックを先に行ない、灰皿や小さなごみ箱などを空にして回る。タバコとガムと子供のこぼした菓子くずとを吸い取り、落ちていたコインは拾ってサイドボードに置いておく。考えている暇などない。 手洗いの車の前で、それでも圭吾は一瞬手を止めた。 常連客のワゴン車や、最近はとみに多いBMWが幅を利かせる中、アルファロメオ166なんぞ止めている奴は、一人しかいない。 「夜久さんか……」 ということは、さっき別の車を手洗いしていた折にでも、来ていたのだろう。 この近辺ではそこそこ名前を知られているらしい、車のディーラーの、マダムキラーでも通りそうな顔は、一度見回したスタンド内にはなかった。 真紅のボディにはまだ傷らしい傷は見当たらない。こんな休日前に顧客の車をスタンドに引っ張ってくるような男ではないから、これは夜久自身の車なのだろう。 車内のチェックも意味がないほどで、内心舌打ちしたいのを堪えて、圭吾は屈めていた上半身を車内から引き抜いた。 と、その後頭部に軽い衝撃が走る。どこか錆を思わせる声が衝撃の退かないうちにした。 「手を抜くな」 振り向けば、三十代、髪をきっちり撫で付けた切れ長の目の男が立っている。夜久克征という芸能人めいた名前は、しかし所長に聞いた所によれば本名らしい。 衝撃の元と思しい手にした本屋の袋は、ずっしりと重いハードカバーの感触があった。 普段は黒っぽいスーツだが、今日はベージュのパンツに濃紺のシャツと真っ当に見える服装をしている。 「……いらっしゃい。不要でしょ、夜久さんの車じゃあ」 客に殴られて文句をいうわけにもゆかず、圭吾はさっさと動いて次の車に向かう。とはいえ、夜久からは5メートルと離れていず、声だけが追いかけてきた。 「高級車ほど、手がかかるし文句もいうもんなんだよ。何年ここで働いてるんだ?」 「3年5ヶ月のバイトっすよ。……今度の休みはデートか何かで?」 軽口を叩く合間にも手は止めず、次の車の車内を掃除してゆく。こちらはマーチだったりするから、尚更に夜久の車の引き立て役にでもなったかのようだ。 「……もうそんなか。それにしては、教育がなってないな。客にそんな無駄口を叩いている場合か?」 「失礼を致しました。ここは車も通るので危険です。サービスルームかファミレスでもいらしてゆっくりなさってください」 「声が、なってない。エンスト起こした車みたいな言い方だな」 煤煙と接客で潰した声にさえ、けちを付けてくる。流石に自分ではどうにもならないことを指摘された腹立たしさを何とか抑えて掃除を終えた。次の車の掃除にかかろうとした時、自分の名を呼ばれて圭吾は振り返った。 昔自分もそうだった、ボーイズソプラノ。入って1ヶ月の吉川雪登だ。 「ケイさん、休憩です、俺ここからやりますっ」 束の間、開放される。食事と睡眠とが待っている。と思ったのも束の間。 「おい。私のはもうすぐだぞ、お前が引っ込んでどうする」 夜久の鋭い声がかかる。普段でも不機嫌でもきつい響きを帯びた声に、吉川がびくりと身を竦ませる。180ギリギリの浅黒い圭吾とは対照的に、色白の吉川は157センチ。 「あ、あの、手洗いは俺と所長でやりますっ」 圭吾の何にでも言いがかりを付けるような夜久が、それでもたった一つ認めていることがある。 「ケイ、遅らせろ。こいつを洗ってから休め」 吉川の方など見もせず、夜久は圭吾に当然のように命令してきた。 2台目の洗車を終えて次のカローラにかかろうとした所長の二宮が、足を止めて夜久に片手を上げる。 「まぁまぁ、夜久さん。こいつ今朝から8時間連続で、このままやらせると俺もまずいのよ。勘弁してやってくれませんか?」 「この前もケイが休みだから延期したんだ、今日は洗ってもらう」 一度圭吾が洗った車を見てから、夜久は圭吾にしか手洗い洗車を頼まなくなった。 妙なところで、認められている。そんなささやかな勝利で、それでも今までの苛立ちも多少は収まる。 「所長、いいっすよ。俺こっち洗ったらずらして入ります。カードだけ時間通り押しておきますんで」 「……悪ぃな、ケイ。頼んだよ」 所長がカローラを洗車機に向かわせたのを見てから、 「空腹だからって傷でも付けたら承知しないぞ」 「俺がそんな真似すると思うんでしたら所長にどうぞ」 さり気なく視線を逸らす夜久の気障さは腹立たしいが、僅かで密かな愉快さが圭吾の中に残った。 吉川他のメンバーがきちんと給油客に応対しているのを確認してから、洗車機ではなく、手洗い用に一応は空けられているスペースにアルファロメオを移動する。 高級車に触れる時間。その車が自分のものではなく、その時間も切り売りしていることを分かってはいても、ステアリングを握る指は僅か震え、車内から匂いたつ新車特有の匂いが鼻に心地よい痛みをもたらす。 夜久がこちらを見ているのが、ミラーごしに分かる。すぐに車から滑り出して、いつも通りに水をかけ、手洗いの為に白いタオルと洗剤を取った時、漸く男はサービスルームのほうへと向かって行った。 洗剤を含ませたタオルで楕円を車体に描きつつ、圭吾は意識を車にだけ向けなおした。 窓ガラスのコーティングを傷つけぬよう車体だけを洗い、ステップに余計なぬるみを残さぬよう、タイヤに白い筋など残らぬように、神経を澄ませて洗い上げる。圭吾の洗車が終わった後客が見るのは、水滴一つ残らぬ、埃だけ拭われたようにぴかぴかの車体だけだ。 車を自分の配偶者や恋人のように、或いは息子や娘のように見る客は少なくない。男性は女性に、女性は男性のように、無体な真似を店員にされるのを極端に嫌う。 水滴が残ったり、洗剤の跡が残った車体は、そんな客からすれば自分以外の相手の手に抱かれた証拠のキスマークでも、見せられたような気がしてしまうのだろう。 だとすれば、自分は最高の浮気相手だろう。圭吾はふとそんな風に思った。 どんなに愛撫をしようとも、座席に座ろうが内窓を拭こうが、客が消し忘れたシステムのスイッチを押そうが、内部のマットを引き出して機械にかけようが、見た目は真っ当でさらさらの、綺麗なままの姿で持ち主に返すのだから。 煤とオイルと排気にまみれた、薄汚れたその日暮らしの若い男と、金持ちに囲われた令嬢や少年が一時遊んでいるような、奇妙な錯覚。 (ちょっとヤバいか、俺も車好きだってだけで) 苦笑して車から出て、座席のシートをずらすと吉川が走ってきた。 「オッケーですか?ケイさん」 「おぅ。夜久さんに『お待たせしました』って言って来い」 その必要はないことに、圭吾は言ってから気がついた。 夜久は既にサービスルームから出て、車の背後から前へと仔細に検分していた。 一歩引いて待つ二人の傍らから、運転席側に回って佇み、 「……ふん」 この素っ気無い一言は、了承の印である。以前、圭吾と同期だった奴は夜久に散々に罵倒され、男のくせに泣き声あげて即日バイトを止めてしまった。 「大変お待たせ致しました」 きちんと帽子を脱いで頭を下げると、ワンテンポ送れて吉川もそれに倣う。 顔を上げれば、夜久がじっと自分と吉川を見比べているのが分かった。 仕方ないじゃないか。こいつはまだ入って大した時間経ってないぞ。 そう思ったとき、夜久の顔は既に次の水洗いを終えて車を転がしてきた二宮所長に向けられた。 「……二宮、こいつ飯だったな。借りて行くぞ」 所長が渋い顔になる。 「夜久さん、勘弁してくれよ。こいつはこれで食ってるんだからな」 圭吾はぽかんとした。何で俺が夜久に、客に付き合わなきゃならねぇんだ? 「だから、こっちも飯時なんだよ。いいだろうが」 吉川がそっと脇腹を小突く。一生懸命低めた声で、 (イイじゃないですか、奢ってもらっちゃえば。ケイさんの洗車カンペキですし) (バカ、客にそんなことさせられっか) 圭吾は軽く吉川の足を踏んだ。だがそれは聞こえていたようで、 「こいつらには、他のお客から差し入れとかあるんで十分です」 二人を睨みながら、所長が強い口調で夜久に言う。ここでは客だ、と思ったのだろう、夜久は渋い顔になって、バタン、と音を立ててアルファロメオに乗りこんだ。 ウィンドウが開いて、 「休憩時間はお前の自由だろう、ケイ。着替えてこないか」 「……有難うございましたぁ!!」 一際大きい声を張り上げたとき、空腹で腹が鳴った。 ちょっとだけ惜しいな、とは思い、乗ればアルファロメオの走りを知ることが出来るとは分かっていたが圭吾は何とか堪えて車を誘導すべく、車道まで走り出た。 その時だけ、彼の気は緩んでいた。 死角になっている車の影から、バイクが急に踊り出てくるのに気がついた時には、退路がなくて。 「……っ!」 ボン、と身体が撥ねた。身体が硬いものに当たる感触。ボンネットだ、と思った。 後は良く覚えていない。 目を覚ませば、病院だった。夜久の車の上に乗り上げて、それで逆に助かったのだとは知らされた。 後頭部を強打して、その影響からか右手が痺れてうまく動かせなくなった。アルファロメオのボンネットは当然傷も凹みも出来ただろう。 暫くはバイトもできない。あちこち痛むし、骨は折れてなかったが頭痛が止まない。 下手をするとバイト自体を辞めることになるかもしれない。 暫くは養生しろと声をかけてくれた所長にも申し訳ない。上京して、身寄りも知り合いもない圭吾を雇ってくれていたのに。吉川も来てくれて、バイト代から頑張って、百円ショップの桃缶を一生懸命買い込んで置いていってくれた。 夜久だけが、来なかった。 腹が立って会いたくないほどだろうか。修理代や、場合によっては交換費用は数十万単位であろうことは圭吾にも分かる。すぐには返せない。そのことを考えると、会いたくないようには思うが、会わねばならない。 大体、この入院の金もどうしたら良いのだろう。所長に借金して、また何とか働いて返すしかないだろう。入院費用もそれなりの額だろうが、どこで相談するものなのだろう。 事故だったから、警察も事情聴取にきた。バイトの時間が長くて、所長は怒られただろうか。あの日だけではないのは、タイムカードでばれてしまう。 圭吾はたっぷりと1週間、自己嫌悪に浸って清潔で簡素な病院生活を送っていた。 そして、医師から取りあえず明日退院の旨を告げられたのである。 「でも、先生」 「悪いけど、ここもベッドの空きを待つ人が多くてね。リハビリは続けないとまずいけど右手の他は異常がないから。頑張りなさい」 「あ、あの、費用とか……」 卯月という医師は、銀縁眼鏡を押し上げると一言答えた。 「あぁ、一人住まいだっけ?ロビーに相談所があるから、そこで聞きなさい」 そんなものだ。押しこまれ、放り出される。一人で一生懸命やってきたつもりなのに。あのバイクに気づかなかっただけで、全部狂っちまった。 アパート、どのくらい家賃待っててくれんだろう。生活保護って俺でも大丈夫なのか、手続きは住民票とか必要なんだろうか。 途方にくれて、大部屋の片隅で、そこだけは遊びに誘うように明るく青い空を、フィルターのかかった窓越しに圭吾は何時までも見つめていた。 次の日。吉川が桃缶と一緒に持ってきてくれていたシャツとジーンズをどうにか着て、圭吾はのろのろと受付に向かった。身体だけで働いていた身には何も残されていない。 『相談受付』と書かれた窓口に向かおうとして、左肩をぐいと引かれた。 振り向けば、黒のスーツ姿。この1週間、一度も来なかった夜久が目の前にいる。 「……夜久さん」 何て言われるだろう。罵倒されたバイト仲間を思い出し、以前だったら笑い飛ばせたろうに心臓が縮みあがる。 それだけの迷惑を、かけてしまったのだから。どれほどぴかぴかに車を磨き上げていたのだとしても、もう取り返しがつかない真似を、この男にしてしまったのだ。 無残に歪んだだろうアルファロメオが思い浮かび、圭吾の目に涙が浮かぶ。 俺が、持っていたら。絶対許せねぇ。ぶつかって傷まで負わせて。絶対怒る。 唇が開く。ぎゅっと目を瞑った圭吾の耳に届いた言葉は。 「バカヤロウ」 あぁ、やっぱり。 「……だから、食事に一緒に行っておけばよかったんだ」 聞き間違えたのかと思った。ぽかんとして見上げた圭吾の手から、支払い書類やその補助に関する申請書の入ったファイルをさっさと取り上げ、夜久は窓口に向かう。 「ちょ、ちょっと……夜久さっ」 無意識に右手を伸ばして痛みに引きつった圭吾を尻目に夜久は会計を終えてしまい、6桁になった領収書を受け取るとポケットにねじ込んだ。 「今度は逃げるなよ」 手首を抑えていた圭吾を肩ごと抱くようにして、玄関から出て行く。早朝の病院の駐車場にある車は、やはりアルファロメオではなく、それでもマセラッティだったりするから夜久らしいと思い、そして逆にその違いが圭吾を居たたまれない気持ちにさせた。 長身の圭吾よりも少しだけ高い男は、有無を言わせぬ勢いでそこへと圭吾を引きずって行くと、ドアを開けた。 「乗れ」 「俺っ」 ぎゅ、と押しこまれる。出ようとしたら足を蹴飛ばされ、ドアを容赦なく閉められた。さっさと運転席に夜久は乗りこみ、キーを差しこんでひねる。 国産車ではそうそう聞けないエンジン音が、朝の空気を震わせる。 「俺、返します、ちゃんと金稼いで返すから……」 病院のゲートを出て行く車の中で、圭吾は夜久にそう訴えた。 高級車の中に、何度も洗濯して擦り切れたジーンズ姿でいることは罪悪感さえ覚える。スタンドの制服であるなら、どんな真似でも出来る。何を楽しもうと、仕事である間だけのことだから。 だがこれでは、遊びで軽々しく乗りかかっているような気がしてきて嫌だ。嫌だ。 「……右手、動かないそうだな」 会ってないのに、夜久はきちんと自分のことを把握していたらしい。ディーラーなんて車を売るほかは遊び倒している人種だと、店の客が陰口を叩いていたことがあった。だから、気に食わない相手を放っておいて好きなことだけをしているのかと思ったのに。 何だか、ぼんやり予測していたことと夜久の様子は全く違う。 「卯月は、私の知り合いだ」 あぁ、それなら夜久が病院につれていってくれたことになる。……何の為に? 「ディーラーが事故を起こして未成年に怪我を負わせたと言われてはたまらん。今回のことは手痛いが、しのごの騒ぐな」 怒られて、あぁそうか、とまた圭吾は情けなくなった。自分はともかく夜久の経歴にまで傷がつくのだ。職業で車を扱う人間が免許に失点を負うのは常人よりまずい。まして、事故だなどと。 自分の事だけ考えていた自分を、内心圭吾は罵った。 交差点を曲がると、二つ先の信号脇にあるスタンドが近づいてきた……と思ったあたりで、マセラッティは左に折れ、繁華街のほうへと向かっていってしまった。 「……挨拶しに……」 「行くにはまだ早いだろう」 それならどこへ行くのかと尋ねるにもまだ気後れしていると、車は馴染みのないホテルやビルの立ち並ぶ辺りへと向かってひた走る。 浅ましいことに、腹も鳴ってしまう。夜久の唇の端がきゅうっと吊りあがって、怖くて圭吾は右手を無意識のうちに庇っていた。 「どのみち、これからどうしたら良いかも分かってないんだろうが」 その通りである。小さく頷けば、 「……ふん」 懐かしいほどのその一言が、涙腺を緩ませそうになる。 少なくとも、今は怒りを向けないでいてくれるらしい。 程なくして、最近はケーキバイキングなどで集客数も多いホテルの駐車場にマセラッティは滑りこんだ。 正面玄関乗りつけなどと言う、夜久らしい無謀な真似はなかったことにほっとし、まだ朝なためか高級車が薄暗いスペースに並ぶ中、圭吾は夜久の車を思って胸を痛めた。どんな惨状なのかはサッパリ分からないが……日本のものほどボンネットはヤワではないだろうとしても、勢いは凄かったからやはり駄目だろう。 どうしよう。どうしよう。 震えていると、助手席のドアが開いて容赦なく引きずり出された。 「こっちだ」 夜久について階段を上る。圭吾の服装では断られそうなホテルのロビーで鍵を受け取ると、夜久はついてくるように目だけで命じ、まばらとはいえ周囲の視線を気にした圭吾は慌てて夜久の後についてエレベーターに乗りこんだ。 ホテルで朝飯というのは、高級なようでいて利用客は多いらしい。ビュッフェ形式のレストランはラフな服装の人間も少なくなかったので圭吾は少しほっとして、卵だのサラダだのといった、そこらのモーニングよりは数等上の食事を目一杯平らげた。 夜久は喋らない口なのか、同じ物を食べながら圭吾の健啖ぶりをしれっとした目で見ている。上着だけは脱いで、Yシャツの身体は結構鍛えられているようだ。ジムにでも通っているのだろうか。 最後に、久々インスタントや缶ではない珈琲を流しこんで圭吾はほっと一息をついた。 座りごこちの良い椅子で力を抜いていると、夜久がゆっくり立ちあがる。 さあ、来るぞ。 もう食ったから体力も気力も……ついたぞ。負けないぞ。 借金まみれだろうと、堂々としてやるんだからな。 昂然と顔を上げると、夜久の口元は笑みの形に歪んだ。 「ケイらしくなったな」 ぐい、と引かれて立ちあがらせられた。 不安も挑戦の意志に塗り替えて睨めば、そのまま廊下に引っ張られる。慌てて腕を解き、自分の足できちんとついて行く。 エレベーターに乗り、7階で降りると夜久は廊下の突き当たり近くにあるドアを開けた。何でホテルなんだろう。所長とかには聞かせたくないような話なんだろうか。 スタンドで培った程度の狭い知識をフル回転して、圭吾は夜久の後について入ると問いかけた。 「……何をするんだ?」 引っ張って行かれたのは、何故か浴室の前。 「それを脱げ」 言われても。着替えも何もないのに。 「脱げ」 ぐい、と腕がシャツを引っ張る。これには流石に仰天した。 「ま、待てよっ、俺風呂は別に……」 「脱げといっているんだ」 軋るような声と、鋭い眼光が今度こそ恐怖で胃の腑まで縮みあがらせた。吐きそうになるほどきつい圧迫感。 ここに至って、圭吾にも何となし嫌な予感がしてきた。しかしまだその認識はどこか非現実的で。 「……ふ、ふざけんなよっ!!あんたの車には悪い事をしたと思ってるけど、でもっ」 「悪い事、だと?」 その瞬間、夜久から立ちこめた空気は、ヤクザや荒くれたトレーラー運転手を見なれた圭吾にさえ、恐怖で身を竦ませるような何かを含んでいた。 「それだけで済ませるつもりでいるのか、お前は?」 逃げないと、と思ったときには遅かった。シャツを引き千切らんばかりに握りこまれて、浴室に連れこまれる。 懸命にもがいたものの、すぐに背後から蹴られるようにして、浴室の床に圭吾はつんのめった。衝撃に、咄嗟についた両手はしかし右が痛んで。 悲鳴を上げたいのを必死で堪える。 「何……する気だ?」 自身は服を着たまま、夜久はシャワーノズルを手に取った。問答無用で栓を捻り、大量の水を正面に回って叩きつけてくる。 「……ゎっぷ!何すんだよ!!」 「自分では満足に洗えないだろう。洗ってやる」 視界が遮られる水の向こうからした夜久の声に、冷たさだけではない悪寒が背筋を這い登った。こいつ、そういう趣味だったんだ。 まさか所長。あの時渋い顔をしたのは、知ってて……? 「止めろっ!!」 叫ぶ顔に対して、容赦のない水の攻撃が続く。片腕では防ぎきれずに、幾らかが鼻に入った。咳き込んでいるうちに、濡れたシャツが引き剥がされそうになる。 慌てて抵抗すると、中途半端に引っかかって身動きが取りにくくなった。 「なかなかのボディだな」 引き締まった肌に、夜久が感嘆にしてはそっけない声を上げる。悪寒はますます酷くなったが、ジーンズのボタンに手がかかったので、脱がされまいと足で蹴り上げた。 そうした抵抗にはなれているのか、さっさと片足だけ抱え上げられ脇腹を擽られて仰け反る。冷たく湿った肌に触れた夜久の指は、何か得体の知れない感覚を背筋までもたらす。くすぐったいとも気持ち悪いとも片付けられない、その動き。 「感じるのか?」 喉の奥でくぐもったような笑い声を上げる夜久は、もう一度ボタンに手をかけ、今度はいとも簡単に前を緩め、抱え上げた足のほうは離すと両手をジーンズにかけてブリーフ後と引き下げた。当然圭吾は抵抗したのだが、その行為は却って夜久の嘲笑と、嗜虐を誘ったようだった。 「……何だ、着たまましてほしいのか?随分と扇情的な奴だな」 「ちがっ!!」 ジーンズは膝の下辺りまで下げられた。濡れて絡みつく衣服の不快感を押しのけるようにして、夜久がこれだけは顔に似合わず分厚い手を伸ばしてくる。 「止めろ、変態っ!!」 「お前は、丹念に洗ってたな。どの車も。まるで舐めるみたいにして丁寧に、……嫌らしいことでも考えていたんだろう?」 夜久の手は一度、洗面台にあったボディソープだかハンドソープだからしい壜に伸び、たっぷりとポンプを押してとろりとした液体を指先に掬い取った。 つ、と、胸から臍に至るラインを指でなぞられる。 濡れた指はまだ色らしい色もない胸の先端に触れ、薄甘い匂いの液体を塗りつけてきた。執拗に弄くる指先から、今までに経験のない感触が送りこまれてくる。 「持ち主より粘っこい視線で、私のアルファだって、お前のその手と目とで余すところなく舐めて、洗う振りをしてベタベタにしていたんだろう?」 似たようなことを、考えたことはあった。でもそれは、夜久のような嫌らしい表現にまではならなくて。 罵倒以上にショックな言葉に、寧ろ血の気が引いた。 「本当は、色々としたかったんだろう?私が買ったばかりの車にさえ、欲情していたお前だからな。この手で」 「……ぁっ」 まだ痛む手を、思い切り握られた。激痛。それでも、勃たされてしまった両の乳首が震えている。 「やめっ!痛いっ!!」 「全部犯して、綺麗な身体を滅茶苦茶に汚して、……楽しかったか?」 一旦下がった手が上に上がり、もう一度、片方ずつをイグニッションキーを回すように摘んで回す。 「ぅっ!」 床のタイルに顔を押しつけ、不快感と呼べなくなりつつある夜久の手から逃れようと、圭吾はその痛みに縋って立ちあがろうとした。途端に足を衣服に取られて、再び床に頭から倒れこむ。鈍い衝撃にくらくらしていると、顎を掴まれて、ぬめりとした何かが自分の唇に覆い被さってきた。 夜久に、男に、キスされたのだ。 「んん〜っ!んうっん!」 何度も、気道を塞がれて咳き込みかかる。それを強引に夜久は奪いつづけ、圭吾がぐったりして力を抜くまで、吸っては歯を立て、口腔内を蹂躙しつづけた。 やがて、力の抜けた彼より戒めを解くように、ジーンズが、下着が取り去られる。 「……何で、だよ。あのアルファ……そんなに、悔しかったのかよ……」 切れ切れに呟く圭吾に、相手は指をつきつけてきた。 「無論だ。お前が、あれを私以外のものにしてしまったんだからな」 そんな言いがかり、とは思う。 「お蔭であの子はお前と心中だ。もう、治ったって私に抱かれやしない。お前が散々に弄んで、汚してくれたからな。あんなに綺麗だったのに、……もう二度と乗る気さえ起こさせない」 脚の間に割って入るように、夜久は膝をついて座った。 少し広げられた圭吾の奥を見透かすように鋭い目を細めて、 「どうやら、お前は誰にも乗られていないようだな」 その声が意味する所は、経験なんてなくたって分かる。 「おっ、俺は車じゃねぇぞっ!!」 「……チューニングされていない子を試すのは初めてだ。どの程度で乗りこなせるか……何せ、お前はあのアルファどころではない、二宮のガードも固かったからな」 すっ、と手が再び下に下がった。探るのは、自分でしか触れたことがない場所。 「止めろっ!止めろったら!!」 「ギアも硬いな。……少しずつ速度は上げるとするか」 そこにだけは、何故かボディソープは塗られなかった。 言葉の通りゆっくり手は動き、こればかりは抵抗がしきれない手捌きに、あっという間に体の内奥は熱くなってくる。 「やっ!いやだっ!」 「初ドライブはエンジンもかかりにくいか……いや、そんなこともないか。ガソリンもたっぷりと入れておいた事だし。オイルが回るまでもうすぐだ」 吐息が項にかかったとき、急に与えられる刺激が鮮明さを増した。 ぐんぐんと自身が膨張してゆくのが分かる。夜久の手の動きだけでゆっくりと濡れ、揉まれて滑りを帯びた音が、弱くなったまま出ているシャワーの音に混じって鼓膜を打ち始める。 自分の身体が、立てている音。それはすぐに水音より大きくなって、自分ではどうしようもなくなる。 「ぁぁっ、はぁっ、ん……」 自分が上げた声に、圭吾は仰天した。昔ほどではないにしろ、潰れたはずの喉とは思えない、甘い喘ぎ声。そこに、ぬちゃぬちゃと粘液の絡まる音が混じる。 「ほら、回転が上がった」 絶えず、夜久は感じやすい部分を攻めてくる。まるでギアやクラッチを切り替え、アクセルとブレーキを踏み替えて車を操縦するように、淡々と、しかし瞳の奥にだけ情熱を燃やして、圭吾をリードにかかる。 結構太い親指の腹を、狭い先端に当てて、めり込ませるようにして強い刺激を送りこませてくる。余りの痛みと、そこに含まれる相手の意思に、圭吾は涙が溢れた。 「やめ、やめ、悪かった、俺が、ぁるかったか、ら……」 「駄目だな。何せ、もうあの子は私の言うことなんかきかないからな。代わりに、言うことを聞かせる車を手に入れることにしたんだ」 その『車』が自分なのだと、もはや隠しようのない液体を浴室の床に滴らせながら圭吾は知った。恥じらいと情けなさとに涙は止まらず、男の手の中で吐息を滲ませ、静脈の浮き上がったそこを探られるままタイルの上で横になっている。 横に何度も首が振られる。限界が近いのだと伝わってしまったのか、夜久の笑みは深まって、動きは一層激しさを増した。 やがて、空白に近くなる意識の脇で、声がする。 「……って、言ってみろ」 何を言われたのか分からないまま、首をもう一度横に振ると、 「それでは、何時まで立っても痛いままだぞ?」 ぎゅ、と根元を握りこまれ、意味も分からぬほど混濁した意識で、圭吾は掠れた声で叫んだ。 「……『もっと……俺の、なか、にも……、下さい』」 「いいだろう」 根元にかかった力が、急に先端に移った。絶頂感。 自分自身では味わえない、限界を通り越した熱の放出に、一瞬気が遠くなった。 ほどなく気がつくと、またぴちゃぴちゃと音がしていた。 今度は、奥のほうから。 両足を天井近くに向けられて掲げられ、赤ん坊がさせられるような格好で、おむつが当る場所には、粘っこい液体を丹念になする夜久の手が添えられている。 再び、恐怖。意識の戻った目が夜久のそれと合った。 この目は、見たことが何度もある。 車に不調はないか、丹念に見ている時の、眼差し。普通の人間よりも車に愛着を持ち、僅かな不具合も見落とすまいとする、……その目は他の人間に向いているときより確かに熱があった。 今はそれが、圭吾に向けられているのだ。 震えが走ったのは、モノとして見られているからか。 それとも、愛情らしきものを認めてしまったためだろうか。 自分でも見たことがないだろう部分に、夜久が再度滑りを掬いとって塗りつける。 「止めて……止めてぇっ」 痛みを堪えて、右手を伸ばしてそこを被おうとする。その手に軽く歯を立てて外させ、丹念に、硬いシートに柔らかいカバーでも被せるように、夜久は揉み解し始めた。抵抗する感触と、爪の先を立てるたびに痛みに泣く圭吾にも気後れせず、丹念に粘液を塗りこめ終えると、ゆっくりと指を差し入れる。 「痛いっ!!」 「これから柔らかくして乗り心地を良くするんだ。色を変えるくらいにしてしまおうか。チューンアップは後から出来るから、サービスの良い車体だな」 少しずつ差し入れ、反応を見ながら丹念に探っていた夜久の指が、ある部分にかかったとき、圭吾の声は痛みとは別種の感覚を得たことを知らせた。 「ぁっふ……ぅぅん」 「ここか。ここがお前のポイントなんだな?」 「ひぃぃぁぁっ!止めて、夜久さん、止めてっ!!」 そう言いながら、圭吾は腰を揺すっていた。身体が、自分の意思を裏切っている。 痛む手は力がもう入らず、痺れたようになったままだ。 左手が滑るタイルの床に爪をかけ、最後の抵抗の意思を示す。 「生憎、私は車を乗りこなさない内に降りたことなんかないんだ。……ガソリン切れまで突っ走るからな、覚悟しろ」 一度引きぬかれた指が、増やされて突きいれられる。ぎし、と歪んだ音がタイルからした。圭吾の爪が一部割れたのだ。 「あぁ、修理代がまたかかるな。不具合も色々と多いし、卯月は叱っておくか……」 奇妙に優しい声、手だけは残酷に抜き差しを繰り返す。 堪えていた声も、もう止まらない。止められないのだ。 「ぁぁっ、ふぁぁぁっ、んぁっ……」 鼻にかかった声に変わったのを知ると、指は広げられ、狂わんばかりの快感に苦しみさえ覚えている圭吾の顔を確認した後、勢い良く引きぬかれた。 「ゃぁぁぁっ!」 圭吾は必ずしも痛みだけとは聞こえない悲鳴を上げていた。 萎えていた部分が夜久の指の動きで勢いを取り戻していることを思い知らされる。 荒い息をついて、身を震わせていた圭吾の傍らに、1枚の布が落ちた。 夜久の、Yシャツだ。 次いで硬質な音がして、夜久のズボンのベルトが緩められ、黒い布の間から、別の暗がりを有した何かが立ちあがる。 鋭い笑みを浮かべている持ち主に相応しく、禍禍しいほどの器官が、蕾から無理やり広げられた部分に擦りつけられる。 しっかりと、両腕で脚ごと抱え上げられた。 「お、お願いですっ、やめっ、俺、言うこときくからっ……」 自分とそう変わらない体格の、年齢だけが一回りも下の少年から哀願されて、夜久は優しく目の前に広がる双丘を撫でた。 それだけで、もう圭吾の声は甘くなり、一筋の粘液が吹き零れて下腹を濡らす。 「言うことを聞くのなら、……乗りこなさせてもらうだけだ」 息を吸い、一気に腰を沈める。余り音楽的ではない、ぎゃあっという悲鳴が、圭吾の喉から上がるのにも構わず、夜久は自分の快楽の赴くままに、腰を打ちつけ続けた。 「くぁぁあぁぁっ!……はっ、はぁぁぁんんっ!!」 夜久に刺し貫かれ、熱を内側に感じ取りながら、圭吾も次第に奇妙な悦びが身体の中、奥の一点から涌き出てくるのを否定しようがなかった。 車に情熱を傾ける人間が、スタンドの女客の視線を全く無視してのける男が、今は意識を圭吾一人に向け、全てをぶつけてくるのだ。 「欲しかったんだろう?これが。お前が、そう言ったものな」 先ほど言わされた言葉が蘇り、肌が紅潮する。嗜虐の言葉なのに、快感が増す。 「……ぁぁあんっ、んっ、んんっ……」 初めてなのに、相手に合わせる余裕なんか、ないのに。 「そうだ、……良い子だ」 どうして俺は、夜久にされるままに腰なんか振るんだろう? 圭吾の目尻から、涙が零れ出たのさえ、夜久は見逃さずに吸い取った。 暫くスライドするうちに、奇妙に錆びついた匂いと滑りが、二人の結合部から流れではじめる。 「おや、少し傷がついてしまったな。内部の、トラブルまでは初めてだ。意外に手のかかる子だね、高級車だった……と言うことか」 もう、圭吾は返事も出来ない。痛みと、それの奥に潜む感触の区別がつかなくなってしまい、昇り詰めることでしか開放されないだろうことだけ思いながら、言葉と行為という夜久の二重の暴戻に堪え続けている。 「それなら、……私のものらしくしてやると、しような」 後は、夜久も最早言葉を使わなかった。何度も何度も腰を打ちつけ、意識だけは遠のかせないように、手を伸ばして圭吾の顎を捕らえる。 辛うじて焦点を取り戻した圭吾は、自分に近づいてくる顔にさえ、もう抵抗することを止めていた。 触れてくる唇に、自分からも力を入れて吸い上げ返す。一度離れた唇は、今度は舌を伴って圭吾の口を舐めまわし、ねっとりと熱い吐息で口腔を侵した。 自分では味わえない、触れ合うことで生まれる陶酔感。 「夜久……さん……っ」 下を引きぬかれるショックで、圭吾は果てていた。先ほどと違い、前を探られることなく果てたその姿。 横倒しに倒れ、もう何も埋めこまれていないというのに、その喉からはまだ甘い声がもれ出ている。 引き締まった下肢から流れ出る赤と白の液体に高まった夜久も、また圭吾の腹の上で強かに放った。 「……上出来な、初ドライブだったな」 羞恥に全身を赤く染め上げ、まるでアルファロメオの代わりにでもなったような肌に、夜久は手指を丹念に這わせていった。 「さて、仕上げのシャワーと行くか」 覆い被さってくる夜久の目と同じ熱が、見返す圭吾の中にも灯った。 圭吾の辞めるという言葉を、二宮は新聞から目を離さずに聞いていた。 「もう少し、踏ん張る気はないのか」 涙さえ滲ませて俯く圭吾は、こみ上げる衝動を必死にかみ締めていた。助けを求めれば何とかなるかもしれない。それでも、外にはもう夜久の車が待っている。 それに、これ以上恥ずかしい姿を所長に晒したくはない……。 「……まぁ、いい。制服と靴を戻したら、帰っていいぞ」 「有難う……ございましたっ」 前のような堂々と響く声ではなかったが、何とか圭吾は平静を保ち終えて、作業着を入れた袋を置いてロッカールームの出口に向かう。その背中に、 「それとな、悪趣味な真似は止めとけって、夜久さんに言っておけ。俺とこからこれ以上はない奴を取り上げたんだから、今度おかしな玩具を入れたまま寄越したりしたら、流石に俺もキレるってな」 びくり、と震え、真っ赤になって小走りに逃げ出す背中をちらり、と見やって二宮は再び新聞に目を落とした。 「今度は他のに食われないように育てないとなぁ。……吉川あたりか。バイトでへこまない様に煽ててゆくのは大変だったのに」 どうやら、客が増えてきたらしく、外を圭吾以外のものらしい足音が幾つも行き交っている。 「……やれやれ。また仕事だ」 自身の興奮と、惜しい子を手放した、という諦めを宥めつつ、二宮は立ちあがった。 車に駆け戻った圭吾は、吉川たちが声をかけてくるのも無視して、慌てたように助手席に乗り込んできた。 「挨拶くらい、してやったらどうだ?」 からかうように言ったこちらを睨む暇も与えず、車は発進する。 とん、と背中がシートにぶつけられ、 「ひっ……」 上がりかかった嬌声を、必死に圭吾は飲み込んでいた。 内奥で蠢く機械の音はスタンド内ではかき消されていたが、狭い車内にははっきりと聞こえていた。 すぐの信号が赤で、マセラッティは止まる。圭吾はその間に夜久の腕に縋り、 「……もう、いいでしょ?夜久さん……とって……」 「駄目だ」 にべもない言葉に、圭吾の目が潤み始める。その元になっているのが自分の言葉だけでないことを、もう夜久は知っている。 「お願……ぃっ、でないと、もう……」 「そこの駐車場。確かスタンドの車も止めてあったな。あそこでするか?」 絶望に青ざめ、喘ぎを隠しつつ必死で首を横に振る圭吾。夜久にかかっていた腕が外され、ゆっくりと自分の股間を抑えこんだ。 「戻るまで耐えられたら、色々とお前の好きそうなものをやる」 それまで大人しくしていろ、と告げると、少しずつ夜久に慣らされはじめている為か、どこか期待するような空気が圭吾の吐息に混じったような気がした。 「我慢していろよ」 信号が青に変わってきっかり1秒後、夜久は思いきりアクセルを踏みこんだ。 急激な振動に、堪えきれず圭吾が途中で果ててしまうことを期待しながら。 |
| 1 2-1 2-2 3-1 3-2 Index |
Copyright 2001-2002 PleasurePrinciple Web master:ai-shiba@mbi.nifty.com